フッ素の特性を活用したキサントン類の高効率合成


 キサントン類はさまざまな動植物により産生される天然有機化合物群であり,これまでに1000種類以上の類縁体が知られています。天然キサントンの興味深い生物活性はもちろん,vadimezanのように人工的に合成されたキサントン誘導体が臨床試験に進んだ例などを鑑みると,その膨大な類縁体の数ともあいまって医薬品シーズとして重要です。また,キサントンは生合成の過程において,骨格構築後にさまざまな修飾をうけるため,複雑な高次構造を示すものも多く,合成化学的にも非常にチャレンジングです。

 当研究室では,上述のように多様な構造をもつキサントン類を自在に,そして効率よく合成できるようになることを目指して,「フッ素の特性を活用した合成方法論」の開発を行なっています。フッ素は,全原子中で最大の電気陰性度を示すことに加えて,原子半径が水素に次いで小さいという特徴をもっています。フッ素のこれら特性は,キサントン骨格の構築を容易にするばかりでなく,骨格構築後の官能基変換にも活躍します。

 以下,当研究室で取り組んでいるキサントン合成に関する研究のグラフィカルアブストラクトです。

1.アニオン型Fries転位反応とSNAr反応のone-pot連続反応によるキサントン骨格形成(参考文献1)

2.Grignard反応/aromatic oxy-Cope転位反応によるプレニル基導入法(参考文献2〜4)

3.SNAr反応/Claisen転位反応によるプレニル基導入法(参考文献5, 6)

4.天然キサントンの全合成

参考文献

 1) Y. Fujimoto, R. Itakura, H. Hoshi, H. Yanai, Y. Ando, K. Suzuki, and T. Matsumoto, Synlett24, 2575–2580 (2013).

 2) Y. Fujimoto, Y. Watabe, H. Yanai, T. Taguchi, and T. Matsumoto, Synlett27, 848–853 (2016).

 3) Y. Fujimoto, H. Yanai, and T. Matsumoto, Synlett27, 2229–2232 (2016).

 4) Y. Fujimoto, K. Takahashi, R. Kobayashi, H. Fukaya, H. Yanai, and T. Matsumoto, Synlett, 31, in press (2020).

 5) Y. Fujimoto, C. Furukawa, K. Takahashi, M. Mochizuki, H. Yanai, and T. Matsumoto, Synlett, 31in press (2020).

 6) M. Mochizuki, Y. Fujimoto, H. Yanai, and T. Matsumoto, Synlett, 31accepted (2020).